重回帰分析と共分散構造分析(SEM: Structural Equation Modeling)は、どちらも変数間の関係性を統計的に明らかにする手法ですが、その位置づけとしては「共分散構造分析(SEM)という大きな枠組みの中に、重回帰分析が包摂されている(含まれている)」という関係にあります。
一言で言えば、重回帰分析を大幅に拡張・発展させたものが共分散構造分析です。それぞれの特徴と関係性について、3つのポイントで整理します。
- 扱える「因果関係」の複雑さ
重回帰分析は、複数の説明変数(原因)から、1つの目的変数(結果)を予測・説明する直線的なモデルです。
共分散構造分析(SEM)は、複数の目的変数を同時に扱うことができます。これにより、「AがBに影響を与え、そのBがさらにCに影響を与える」といった媒介関係(パス解析)や、双方向の影響関係を1つのモデルで同時に検証できます。
※ただし双方向モデルは制約条件が厳しくなります - 「見えない変数(潜在変数)」の取り扱い
重回帰分析で扱うのは、実際に測定したデータ(観測変数)のみです。
共分散構造分析(SEM)の最大の強みは、直接測定できない抽象的な概念(潜在変数。例えば「学習意欲」「顧客満足度」など)をモデルに組み込める点です。理論にもとづいて潜在変数の構造を検証する「確認的因子分析」の機能が内包されています。
- 包括関係(位置づけの整理)
共分散構造分析(SEM)は、非常に汎用性の高い「一般化されたモデル」です。そのため、SEMの機能に特定の制限(制約)を加えることで、従来の様々な多変量解析手法を再現できます。
SEMから「潜在変数」を排除し、観測変数だけで複雑な因果関係を組むと「パス解析」になります。
そこからさらに「目的変数を1つだけ」に制限すると、「重回帰分析」と等価になります。
共分散構造分析 (SEM)⊃パス解析⊃重回帰分析
視覚的な違いのイメージ
重回帰分析のイメージ:
X 1 、X 2 、X 3(独立変数) ⟶ Y(単一の従属変数)
共分散構造分析(SEM)のイメージ:
潜在変数(目に見えない概念)同士が複雑に矢印で結ばれ、それぞれの潜在変数の下に、それを測定するための複数の観測変数がぶら下がっているネットワーク構造。
まとめ
重回帰分析は「1つの結果に対して何が効いているか」をピンポイントで調べるのに適した堅牢な手法です。一方で、共分散構造分析は、より複雑な現象の背景にある「メカニズム全体(構造)を丸ごとモデリングして検証する」ための、重回帰分析を包摂する、より汎用性の高いフレームワークです。