「なぜ、『時や条件をあらわす副詞節』中では動詞は現在形になるのか?」

高校に入学すると真っ先に、「英文の従属節が「時」や「条件」をあらわす副詞節である場合に、未来の内容でも現在形であらわす」と教わりますが、たいていの生徒は「そういうルールなんだ。ふーん。」で終わってしまいます。しかしここには深い理由が存在します。

  1. 問いを逆向きに立て直す

「未来なのに現在形」という言い方自体が、実は前提を一つ呑み込んでいます。英語には「動詞そのものの形を変えて未来を表す方法がない」からです。形態論的に区別されるのは preterite(単純過去形) と present(現在形)(あるいは past と non-past)の二つだけで、will は tense marker(時制をつくるもの) ではなく法助動詞(話し手の判断や気持ちを表す助動詞)です。

* わかりやすく言うと、goをwentにすることはできますが、未来の内容にするときにgoそのものを変化させてgollみたいな語を作ることができず、かならずwillなどが付くということです。)

そうすると問いは「なぜ未来形が現在形に置き換わるのか」ではなく、「なぜ主節にだけ法助動詞が現れるのか」になります。(例:”When he comes tomorrow, I’ll tell him.”)

  1. will は「話者の判断」の標識である

will は古英語 willan(欲する・意志する)に由来し、現代英語でも意志・予測・推量というモダリティ(判断や気持ち)を保持しています。予測とは「話者が未来についてある判断を下し、それを主張する」行為です。

一方、時・条件の副詞節が担うのは主張(assertion)ではなく前提(presupposition)です。”When he comes tomorrow, I’ll tell him.” で話者が主張しているのは「tell=伝える」ことだけであり、「he comes=彼が来る」のほうは、そのもとで主節が評価される枠組みとして与えられているにすぎません。主張されていない内容には、話者の判断を担う法助動詞を付ける動機がない。だから無標の( 特別な目印や追加の形式がない)non-past 形(現在形)が現れるのです。

  1. 「when/if があるから未来は自明で冗長」説では足りない

学校文法でよく使われる冗長性の説明は、次の対比で破綻します。
I don’t know when he will come.(名詞節=間接疑問)
When he comes, I’ll let you know.(副詞節)
同じ when でも名詞節では will が残る。名詞節は「知らない」の対象そのもの、つまり命題内容として前面に出ているからです。冗長性ではなく主張/非主張の区別が効いていることの、いちばん明快な証拠です。

  1. if 節に will が現れる場合を逆から見る

例外に見える例が、かえって上の分析を裏づけます。
If you will wait here, I’ll get the manager.(意志の will。「待ってくださるなら」)
If it will make you happy, I’ll come.(will の事態が主節より後に起きる。条件になっているのは未来の結果のほう)
If prices will rise anyway, we should buy now.(予測そのものが所与として置かれている場合)
いずれも will が純粋な時間指示ではなく意志・結果・推量を担っているときにだけ生き残る。時間だけなら消える。

以上の説明に加えて、「さらに古い層として、古英語・中英語ではこれらの節に接続法(subjunctive)が使われていた」という側面や、「未来における前時性を現在完了で表すこととの関連」もあるのですが、話が専門的になりすぎてしまうので、ここらへんでやめておきましょう。

何ごとも「ルールだからそうなんだ。テストに出るから暗記しよう。」ではなく、本質を理解することが大切ですね。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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