今回は、道徳的判断の第3の立場Emotivism(「情緒主義」)について検討していきます。
正直に告白しますと、この立場はいくら読んでもわかりにくいです。
…emotivism says that moral judgments aren’t the sort of thing that can be true or false.
Emotivismは他の2つの立場(「客観主義」、「相対主義」)と異なり、道徳的判断は真偽を問うことができないと主張します。言い換えれば、道徳的判断は「命題ではない(ethical sentences do not express propositions)」ということです。
According to emotivism, moral claims are neither statements of objective fact nor ones whose truth is subjective or culturally relative. They’re expressions of our emotional reactions.
道徳的主張は客観的事実の表明でもなければ、主観的でも文化的に相対的でもなく、私たちの感情的反応の表現なのです。要するにこの立場は、理性で把握するような道徳法則を想定していません。
ここでpolygamyの例でSubjectivistの態度と比較してみます。
The subjectivist says that my statement ‘Polygamy is morally dubious’ is true just in case I morally disapprove of polygamy. The emotivist denies this, but she says instead that my assertion directly expresses my moral disapproval. In somewhat colourful language, the emotivist is suggesting that …, it’s as if I said ‘Boo for polygamy!’ thereby directly expressing my moral disapproval.
少し英語の解説をしますと、in caseというのは受験英語で「・・・する場合に備えて」と覚えている方も多いと思いますが(え、忘れていましたか?笑)、普通に「もし・・・の場合には」という意味もあり、ここでは後者だと思います。
これを読んでもまだわかりにくいですが、
…our moral statements are not the expression of beliefs in matters of fact….but rather the expression of our moral attitudes.
ということで道徳的陳述がbeliefsの表現ではないと重ねて表明されています。
belief= the feeling of being certain that something exists or is true:ですから、「真偽は別にどうでもいいよ」ということですね。
それでもまだ釈然としないので調べてみましたら、この理論はアルフレッド・エイヤーの1936年の著書『言語・真理・論理』で鮮やかに表現されたそうです(持っているが読んでいません・・・)。
さらにR.M.ヘア『道徳の言語』で修正された形で議論されたらしいです(がこれも積んであって、読んでいません・・・。)。
でも悔しいので本棚からエイヤー引っ張り出してきて、少し引用してみましょう。
「さて今私が私の陳述の一般化をして「金を盗むことは悪い」というならば、私は事実的な意味を持たない、いいかえれば真か偽でありうるような命題を表現してはいない文章をつくり出しているのである。それはあたかも私が「金を盗むこと‼」と書き、その感嘆符のかたちと太さとが適当な規約により、特殊の道徳的な非承認の感情が表現されていることを示している場合と同様である。この場合真か偽かでありうることは何一つとしていわれていないことは明らかである。(『言語・真理・論理』p. 148)」
この3回の投稿で書いてきたことはすべてメタ倫理学の問題です。
関心のある方は佐藤岳詩『メタ倫理学入門』をお勧めいたします。
私もちゃんと読んで皆さんに紹介できるように努力いたします。
その日を楽しみにしていてください(永遠に来ないかもしれませんが)。
最後にPhilosophy for Everyoneのこの項目を執筆したMatthew Chrismanによるの解説がありますのでリンクを貼っておきます。Emotivism https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/9781444367072.wbiee052