これから断続的にではありますが、「効果的な利他主義」について書いていきたいと思います。

最初にお断りしておきたいことは、私は「利他主義」から程遠い人間であるということです。

小学校低学年くらいの頃のエピソードを紹介します。私はカブトムシを10匹くらい飼育していたのですが、母から「お友達に1匹あげなさい」と言われても、「やだー」と泣き叫ぶような、そんなダメ人間でした。その後60年近く経ちましたが、人間性がそれほど向上したとは思えません。それでもまったく利他的な行動をしないかというと、そうでもなさそうです。

それにしても、常に利他的に行動出来る人でないと「利他主義」は学べないのでしょうか?この論法でいきますと、カントを語る人は絶対嘘をついてはいけないことになりますし、動物倫理を語る人は完全な菜食主義者でなければならないことになってしまいます。

そういうわけで、ここではたとえ立派な行為が紹介されていたとしても、多くの人は「現実問題として、そんなことはできないなー。」と感じる、そういう視点を大切にしていきたいと思います。それでも得られる何かを探究していきましょう。

まずはWikipediaによるEffective Altruismの英語版の定義を見ていきましょう。(今回調べていて気が付いたのですが、Wikipediaの日本語版は英語版の忠実な翻訳ではないようです。)
引用の後の日本語は私訳、カッコ内は私の補足です。

Effective altruism (EA) is a 21st-century philosophical and social movement that advocates impartially calculating benefits and prioritizing causes to provide the greatest good. It is motivated by “using evidence and reason to figure out how to benefit others as much as possible, and taking action on that basis”.

「効果的利他主義(EA)とは、(与えることのできる)利益を公平に計算し、最大の善を提供するために(その利益を与える)根拠に優先順位を付けることを提唱している21世紀の哲学的・社会的運動である。この運動は、「どうすれば他者にできるだけ多くの利益をもたらすことができるか、を考えるために証拠と理性を用いること、それに基づいて行動を起こすこと」によって動機付けられている。」

Effective altruists emphasize impartiality and the global equal consideration of interests when choosing beneficiaries. Popular cause priorities within effective altruism include global health and development, social and economic inequality, animal welfare, and risks to the survival of humanity over the long-term future. EA has an especially influential status within animal advocacy.

「効果的な利他主義者は、受益者を選ぶ際に公平性と世界的に平等な利害の考慮することを重視する。効果的利他主義の中で(利益を与える)根拠の優先順位が高いものとして、世界的な健康と開発、社会的・経済的不平等、動物福祉、長期的将来にわたる人類の生存に対するリスクなどにかかわるものがある。EAは、動物の権利擁護活動の中で特に影響力のある地位を占めている。」

The movement developed during the 2000s, and the name effective altruism was coined in 2011. Philosophers influential to the movement include Peter Singer, Toby Ord, and William MacAskill. What began as a set of evaluation techniques advocated by a diffuse coalition evolved into an identity.

「この運動は2000年代に発展し、2011年には「効果的利他主義」という名称が生まれた。この運動に影響を与えた哲学者には、ピーター・シンガー、トビー・オード、ウィリアム・マッカスキルなどがいる。一連の評価手法として様々な団体から提唱されたものが、ひとつのまとまった運動へと発展した。」

いかがでしたでしょうか。この運動の概略がつかめたところで、次回からはピーター・シンガーのプリンストン大学における講義、同じくピーター・シンガーの『あなたが世界のためにできる たったひとつのこと〈効果的な利他主義〉のすすめ〉』、そしてウィリアム・マッカスキルの『〈効果的な利他主義〉宣言!――慈善活動への科学的アプローチ』の中から、重要と思われるところをピックアップして考えていきたいと思います。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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