「恵比寿ガーデンシネマ」(オシャレです。デートにお薦めです!)にて、『天国の日々』(Days of Heaven、1978年)(予告編はこちら)を鑑賞してきました。前回のオリヴェイラ監督『アブラハム渓谷』に引き続き、旧作リマスターを映画館で鑑賞です。

「なぜ旧作を?」とお考えの方もいらっしゃるでしょうが、その理由は「名作であるのに、映画館で見逃しているから」です。ブレッソン『白夜』は観たかもしれませんが、それでも50年近く前のことです。『アブラハム渓谷』は劇場公開されませんでしたし、『天国の日々』は今日のような名声を博していませんでした。(『キネマ旬報年間ベスト10』にも入っていません。)

さらに、『天国の日々』は画面の美しさで名高いのに、現在DVDは発売されているものの、ブルーレイは未発売です。そういうわけで、今回の4Kリマスターは楽しみにしておりました。

ところで、最近は映画の世界から身を引いて?おり、よく分かりませんが、テレンス・マリックはシネフィルの間ではそれほど評判が良いとは言えないと思います。私が考えるに、その理由は2つあって、一つはマリックが哲学教師だったこともあり、映画が「抽象的」・「観念的」であることです。(たとえば『ツリー・オブ・ライフ』がその典型的な例です。)

もう一つは画面や音楽が美しすぎて、「抒情に流されている」とみなされているからです。『天国の日々』の撮影監督はネストール・アルメンドロスです(映画通はこの名前を聞いただけで、よだれが出ます。)。彼はエリック・ロメールの元でカメラマンの代理を務め、その後フランソワ・トリュフォーや、ジャン・ユスターシュといった映画作家の作品を数多く担当しました。また音楽担当はエンニオ・モリコーネです。こちらは『ニュー・シネマ・パラダイス』で有名です。

以上のような問題点はありますが(いや本当に問題なのかも怪しいですが)、私は素人ですし、そんな先入観を持たず、目いっぱい楽しみました。今回はその魅力を語りたいと思います。

まずは(まあよく言われることですが)その映像美です。この映画は主に1910年代のアメリカの麦畑が風に吹かれているだけの?映画ですが、ネストール・アルメンドロスは決して撮影対象に直接強い光を当てません。日没の自然光を活用したワイド・ショットの画面は、まるでフェルメールの絵画のようです。

映画のナレーションは少女リンダを通じて語られますが、無垢なシンプルな語り口は、映像の質感を高めています。リンダ以外の登場人物は、何かを説明するような台詞は一切発しません。

(ネタバレ注意)また、物語の後半に現れる農場の火事のシーンは、三角関係にからんだ欲望と、その破滅を象徴的に表現しています。

この映画の全体のテーマは一言で言いますと「貧困からの脱出と愛の間の葛藤」なのですが、それがマリックらしい宇宙的な視点から描かれています。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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