今回は、最近出版されました大山祐亮『外国語独習法』 (講談社現代新書)の第1章~3章をご紹介します。細かい部分に関しましては、直接本書を購入し、手に取っていただければと思います。「  」は原則引用部分です。(ただし引用でなくても、「言語分布」のように、ある用語に「  」を使用することがあります。)なお*の後は私の個人的な「感想」です。

はじめに、この本を読んだ動機を説明します。私は語学で「身を立てて?」いるにもかかわらず、自分には言語的センスがないとつくづく感じています。そこでpolyglotと呼ばれる人たちがいかなる態度で言語に接しているか、とても興味がありました。(ちなみに著者の大山氏は、「東大に入って言語学をやった」のではなく、「言語学をやるために東大に入学し、100以上の言語を学習した」研究者です。)

【第1章 世界の言語地図】
 
この章では、まず、語族・語派・言語の関係が説明されます。その上で『ヨハネによる福音書』の「はじめに言葉があった」を例文にして、世界の言語分布が説明されますが、そのあまりの多様さに目が眩むほどです。

次に、著者が専門とする「インド・ヨーロッパ語族」について、さらに詳しい説明がなされます。この語族に含まれる諸言語の使用者は、全世界で30億人を超すそうです。具体的には、ゲルマン語(英語、ドイツ語など)、ロマンス語(フランス語、スペイン語など)、ギリシア語(古典ギリシア語、現代ギリシア語)、バルト・スラヴ語(ロシア語など)、インド・イラン語(ヒンディー語、ベンガル語など)、ケルト語(アイルランド語、ウェールズ語)などです。

最初、「世界の言語地図」が「外国語独習」とどんな関係があるのだろうかと思いました。しかし、「いかに言語同士が影響し合い、流動しているのか」、「どのような経過をたどって、いまの言語分布になっているか」が考察されることにより、ターゲットとする言語にどう接すれば良いかが分かりました。(逆に言うと、一口に外国語と言っても多種多様にあり、アプローチの仕方も異なるということです。)

* 「多言語習得のコツ」だけでしたら、YouTubeなどにもたくさん紹介されていると思います。しかし、本書の価値は、習得のノウハウだけではなく、その背後にあるものを明らかにしていこうという、比較言語学者らしい著者のこだわりにあります。これは非常に大切だと思います。

【第2章 外国語習得の心構え】

この章の冒頭で「語学を始めようと思っている人が共通して目指すべきレベル」が述べられます。それは、読み書きならば「自分の興味がある分野の内容は辞書を引けば読める」レベル、会話ならば「基本的な文法事項の例文がある程度頭に入っていて、ゆっくり発音された短い文なら聞き取れる」レベルです。

次に50の「語学独習のルール」が、章をまたいで紹介されます。全部挙げるわけにはいきませんので、私が気になったものだけをピックアップさせていただきます。

ルール1 「自分を責めない」→「日々のノルマや目標を達成可能なレベルまで下げれば良い」要するに、無理をして張り切りすぎると、続かないということです。

ルール4 「最終防衛ラインをつくる」→「どんなに忙しい日で最低これだけはやるというラインを設定しておく。」まったくやらない日を作らないということです。

* 詰碁・詰将棋や筋トレと同じです。毎日ほんの少しでも触れていないと、あっという間に力は低下していきます。いかにルーティーン化するかがポイントですね。

【第3章 教材はこうやって選ぶ】

ルール8 「やっぱり書籍教材がベスト」→アプリやYouTubeは初心者の主教材としては推奨されていません。なお書籍教材を紙の本か電子書籍いずれにするかは、個人の好みで決めてよいそうです。

ルール10 「選ぶなら文法重視のものを」→教材選びで文法を重視するのは、「複雑な会話をしようとすればするほど、結局は文法が重要になってくる」からです。

ルール14 「自分だけの語彙集を作る」→著者は、「勉強をしていくなかで一度出てきた単語はできるだけ電子検索ができるようにしておきたい」と述べます。その際、Microsoft Wordファイルでも良いし、Ankiのようなアプリを使用しても良いそうです。

ルール15 「ノートは書き散らすためにある」→著者は「ノートを「記憶の補助」として使う」ことを推奨しています。わかりやすく言うと、「書いて覚えよ」ということです。

ルール16 「読解用のノートは「ゆったり、たっぷり」」→読解用のノートを作る時、著者は本文を書き写すことを強く推奨しています。その上で文章や単語の意味・文法事項・日本語訳を付け加えていきます。そのためスペースを十分に空けておくことが肝要なのです。

ノートと話は離れますが、この章の最後に、語学学習アプリが紹介されています。

著者は「アプリの真価は単語暗記の管理にある」と考えています。代表的なアプリはAnkiで、文法や会話の練習ができるアプリとしてはDuolingoが代表的です。Duolingoは、ルール4の「最終防衛ライン」としては最高のアプリだそうです。ただ、アプリのみの学習は推奨されておらす、書いたり音読したりと併用することが重要だと書かれています。

* 語学のセンスのない語学教師から見まして、本書は「楽して言語が習得できる」などとは決して言わず、語学の王道を述べています。それでもなるべく楽しみながら、挫折しないで続けるにはどうしたらいいか、そのヒントが散りばめられています。

* 上記で抜き出したルールで、私が特に反対だというものはありません。ただ、ルール14に関しましては、自分で作らずに市販のものをうまく活用するのもありかなあ、と思います。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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