今回も引き続き、最近出版されました大山祐亮『外国語独習法』(講談社現代新書)の第4章~終章をご紹介します。細かい部分に関しましては、直接本書を購入し、手に取っていただければと思います。「  」は原則引用部分です。(ただし引用でなくても、「言語分布」のように、ある用語に「  」を使用することがあります。)なお*の後は私の個人的な「感想」です。

【第4章 独習の秘訣~文法編~】

著者は言語を「文型優先型の言語」と「活用優先型の言語」に分類します。前者の代表は、英語、フランス語、ドイツ語、中国語です。後者の代表はラテン語、ギリシア語、アラビア語、日本語です。

「文型優先型」は、
1.単語の活用が少ない。2.辞書を引きやすい。3.品詞の識別がしにくい。4.活用が少ない分、活用以外の理解に努力を要する。5.語順の自由度が低い。などの特徴があります。

「活用優先型」は、
1.活用が複雑な分、解釈を間違える可能性が低い。2.語順などの自由度が高い。3.初級文法の習得に時間がかかる。などの特徴があります。

* この分類は知りませんでした。「目から鱗」です。

ルール17 「教科書の1周目は「速く浅く」」→教科書の独習は2周することが原則です。1周目は文法を確認し、活用表はすべて筆写します。本書ではスペイン語が例として挙げられていますので他の言語は多少異なるかもしれませんが、著者は「三人称単数形」「一人称単数形」「三人称複数形」の順で学習することを推奨しています。

* 高校1年生の時、英語の参考書をじっくり精読しようとして失敗した経験を思い出しました。最初に一周するということで、全体の見取り図を手に入れることができるのですね。

ルール19 「まずは語順を押さえる」→著者によれば「重要なのは主語・動詞・目的語の順番」です。「次に重視するのは、形容詞や関係節といった、名詞を修飾する表現が名詞のどちら側に置かれるか」です。その次が「話題を文頭に置くことが可能か」、最後が「疑問文をどうやって表現するか」です。

* 私は、英語の本質はSVOであると教えています。またwhat以外の関係代名詞節が形容詞節であることも、絶えず教室で話しています。「英文法とは語順のことだ」と言いたいくらいです。あと、英語で言うと、疑問詞で始まる疑問文には語順が2種類あることがわかっていない学習者が多いです。

ルール23 「変化表と例文は書きとる」→書き取り練習をした方がよいものは、この2つです。著者は「書くことは言語の綴りやリズムに慣れるための重要な手段」であると述べています。

* 昔、「わら半紙(死語ですかね)1,000枚に書き取り練習すれば、東大に受かる」と言われていましたが、いつの世の中も大切なものは変わりません。「手が覚えている」という境地に達することが大切です。動画視聴は、やはりあまり役に立ちそうもありませんね。

【第5章 独習の秘訣~読解、暗記編~】

ルール28 「初級レベルでは精読を優先」→なぜなら「精読をしようと思ってもできない言語は、速読もできない」からです。「精読では、読めないところを飛ばさない努力が必要」とも述べられています。

* 私も「受験生(高校3年生)は、夏までに精読用の参考書を2周して、それから長文に手をつけろ。」と教室で話していますので、まったく同感です。文構造レベルの精読と、単語のニュアンスをつかむ精読と、両方必要だと考えています。

ルール30 「読解練習としての作文術」→まず著者は「理解語彙」(受容語彙)と「使用語彙」(産出語彙)を区別しています。

* これは20年前くらいに私が大学院で学んだ区別です。これを区別することで、どの単語は書けなければいけないかを明確に意識できるようになります。また語彙学習の目標が、受容語彙5,000語、産出語彙1,500語などというように、具体的に立てられます。

「作文に要求される能力は、読解に要求される能力より高い」

* これも重要な指摘です。ですから、意外なことに、英作文をやると読解の能力も上がるのです。本当です!「なぜここは小文字のbutでなく、大文字のButなのか」というようなことも理解できるようになります。

ルール32 「暗記は複数の手札を持つ」→たとえば「単語の暗記の場合、音読、書き写し、暗記アプリのようないろいろな手段を積極的に併用することが定着への近道です。」と著者は述べています。筆者は若いので、昔ながらの方法と最新の方法を併用しています。本書でAnkiという名前で紹介されているアプリは、アンドロイドではたぶんAnkiDroid Flashcardsという名前です。(iOSは分かりません。)私もさっそくインストールしてみました。

ルール34 「フレーズ音読で暗記効果アップ」→音読は単語単位ではなく、「フレーズ単位」、「例文単位」で行う方が効果的です。

* これも同感です。単純作業に思える「例文暗唱」ほど効果のある学習方法はありません。私は「単語集は(例文なしには)やるな。」と言っています。今流行の『英語のハノン』なども広い意味では文単位の音読と言えます。

【第6章 独習の秘訣~会話・発音・発展編~】

ルール37 「発音、リスニングのコツを知る」→私も常々教室で言っていることですが、著者はこう述べています。「自分で発音できない音は他人がしゃべっても聞き取れません。」ですから、自分で発音練習した後にリスニングの練習をするのが手順です。「応用的な練習方法として、オーバーラッピングやディクテーションという方法」も紹介されますが、ここでは詳細は省略します。

* 「音読」が言語学習においていかに重要かは、私よりずっと言語が達者な名人達が語られているところです。英語に関して言えば、細かい発音よりもアクセントが命です。

ルール39 「会話練習に潜む落とし穴に気づく」→ここで筆者は大変重要な指摘をします。「会話の本質は、「コミュ力+作文+発音+リスニング」です。他の分野から独立した「会話力」は存在しません。」

* ですから、「ただお互いに会話学習をさせる」ような語学の授業は、雰囲気だけで効果はないのです。

ルール41 「言い換えは必須の技術」→著者はこう述べます。「つまるところ、作文力・会話力とは、言い換え力・要約力です。」

* 東大の2次試験大問1は毎年要約です。また、スマホのない時代、英語のネイティブ・スピーカーもシソ-ラス(thesaurus)という類義語辞典を持ち歩いているのを知り、「言い換え」の重要性を知った経験が私にもあります。

【終章 外国語独習のすすめ】

多言語学習でわかることに関して、著者はこんな過激な発言もしています。
「英語やフランス語も、他の言語と同じ程度には凡庸な言語です。」

* 要するに、英語やフランス語を「特権化」するなという指摘です。

また「語学はただの技能やスキルではないし、実用性は語学の本質ではないのです。」とも述べています。

* 「実用」英語検定や「TOEIC何点でいくら給料が上がる」というような風潮に対する、強烈なアンチテーゼですね。

* 全体を通じての感想:若き語学の天才がどんな秘術を公開するのかと思いましたら、語学の王道が語られていました。ただ、それを楽しみながら途中でやめないで継続することこそが「才能」なのでしょうね。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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