大雨の中、パナソニック汐留美術館にて、『オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き』を鑑賞してきました。(土日は時間指定になっています。)

まず、ルドンに関して簡単にご紹介しておきましょう。オディロン・ルドン(Odilon Redon、1840-1916)は、フランスの象徴主義の画家であり、独特の幻想的で詩的な作風で知られています。

ルドンの技法は、彼のキャリアの初期と後期で大きく変化しました。

初期のルドンは、主に木炭やリトグラフを用いたモノクロの作品で知られ、これらは「黒の時代」と呼ばれます。この時代の作品は、具体的な物語よりも観る者の想像力を刺激することを目的とし、象徴主義の精神を体現しています。

1890年代以降、ルドンは鮮やかな色彩を用いた油彩やパステル画に移行しました。この時代は「色彩の時代」と呼ばれます。「黒の時代」から「色彩の時代」への変化は、彼の精神的・芸術的成長を反映しており、花、蝶、神話的形象など、より明るく詩的な主題が登場します。この時期の作品は、印象派や後期印象派の色彩感覚とも共鳴しつつ、独自の内省的で神秘的な世界観を保ちました。

ルドンの作品は、夢、幻想、無意識の世界に深く根ざしており、しばしば神話、宗教、文学からインスピレーションを得ています。彼は「目に見えないもの」を視覚化することを目指し、抽象的で詩的なイメージを創造しました。彼の技法は、具象と抽象の間を行き来し、20世紀のシュルレアリスムや抽象表現主義の先駆けとも言えます。

ルドンは、ギュスターヴ・モローやピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌらとともに、象徴主義運動の中心人物でした。象徴主義は、印象派の外的な現実の描写に対抗し、精神性、夢、想像力を重視しました。

彼の作品は、現実を超えた内面的な世界を探求し、感情や観念を象徴的なイメージで表現しました。このアプローチは、文学や哲学(特にエドガー・アラン・ポーやシャルル・ボードレール)の影響を強く受けています。

ルドンは、象徴主義詩人のマラルメや、音楽家のクロード・ドビュッシー、同時代の画家ギュスターヴ・モローやポール・ゴーギャンとも交流があったようです。

私は昔フランス文学を専攻していたこともあり、ルドンとジョルジュ・バタイユの間に強い繋がりがあると、ずっと思い込んでいました。しかし彼らは同時代ではなく、ルドンがバタイユに間接的に影響を与えたというのが真実のようです。
(たとえばルドンの眼のイメージが、バタイユの『眼球譚』にインスピレーションを与えたというように。)

パナソニック汐留美術館には『ルオー』の常設展も一部屋あって、ルオーとルドンの作品が並列で展示されており、興味深かったです。また、出口のところにあるショップはなかなか充実していました。並んでいる文学作品を見て、日本の文学で言えばルドンは澁澤龍彦と親和性が高いのだなあ、と実感しました。

なお、今回の『ルドン展』多くの作品が岐阜県美術館所蔵のものでした。「なぜルドンが岐阜に?」と疑問に思いましたら、「岐阜県美術館は、40年余り前の創立時以来、継続的にルドン収集を行い、現在では世界的規模のコレクションを作り上げた美術館だから」だそうです。

ルドンの絵には、眼のメタファーがいたるところに登場します。眼に関して、ルドンの著書『私自身に』から、彼の言葉を引用しましょう。

「精神を養い、魂を養う養分を吸い取るためには、眼が欠くべからざるものだ。眼を持っていない者、見る能力、正しく見る能力をある程度持っていない者には、不完全な知性しかないだろう。」

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です