前回の(その1)につきまして、「何を主張したいのかよく分からない」と親しい人に言われましたが、これはそれほどセンシティブな話題なのです。今回も一方に加担せずに、これを支持する人たち、反対をする人たちの意見を聞き、多角的に考察して、冷静に客観的な判断をしてみたいと思います。
私の意見は主に今回の後半部分と(その3)で全面的に展開されることになります。
(そこで「袋叩き」にあわないことを祈ります。)
ですから、途中を読むのが面倒くさい人は、今回の最後と(その3)だけでもお読みください。
さて、前回の(その1)では「日本人ファースト」の「日本人」が何を指すのか、またそのような「日本人観」がどのような影響を持つのかが考察されました。今回はこのスローガンの「表向きの」狙いと、それに反してこのスローガンが喚起してしまうものに目を向けたいと思います。
今回(その1も含めて)「日本人ファースト」とは参政党の政策を指しますが、本文中ではあえて参政党という表現を使用しませんでした。その理由は、この投稿が参政党への支持や批判を検討することではなく、あくまでも「日本人ファースト」という表現にターゲットを絞ったものだったからです。政党名を記することで、参政党の憲法観その他が判断に影響を与えることを避けました。
さて、このスローガンは、公式には、日本国民の利益を優先し、日本の文化や経済、治安を守るための政策を意味するとされています。減税などの経済政策を別にすれば、このスローガンは具体的には、以下のような政策と結びついています。
「外国人政策」:行き過ぎた外国人受け入れの反対や、外国人による土地・不動産購入の制限。
「文化・教育」:日本の伝統や歴史を重視した教育、家族観の保護(選択的夫婦別姓や同性婚への反対など)。
このスローガンに対して、「人間に優劣をつける」との批判が出ています。主な批判点は以下の通りです。
「排外主義との関連」:このスローガンは外国人への差別や敵対心を煽る可能性がある。
「デマの利用」:このスローガンを唱える人の一部は、「外国人が生活保護で優遇されている」といった事実ではない主張をしている。
「社会の分断」:このスローガンは外国人やマイノリティを排除するニュアンスを含むため、社会の分断を招く危険性がある。
「国際比較」:これは、外国の極右政党のスローガンに似ており、移民排斥やナショナリズムの台頭と関連づけられる。
一方で、一部の論者は、「日本人ファースト」が差別や優劣を意図するものではないと主張します。
擁護の主なポイントは以下の通りです。
「母国愛の表現」:このスローガンは母国愛や郷土愛を反映した自然なスローガンであり、外国人排斥を意味しない。
「国民の不安への対応」:このスローガンの支持者は、経済の低成長、物価高、人口減少、「オーバーツーリズム」への懸念などの不安を「反グローバリズム」の立場から取り上げ、国民の声を代弁している。
「選挙戦略としてのキャッチコピー」:これを唱える党は、このスローガンを選挙期間中のキャッチコピーと位置づけている。
結局、「日本人ファースト」が人間に優劣をつけるスローガンかどうかは、スローガンの文脈や運用、受け手の解釈に依存します。そうは言いましても、上記の批判や擁護のうちに、考えるべき点がいくつかあるように思えます。
一番の問題点は、「日本人ファースト」というスローガンの意図が曖昧なことです。公式の説明では、「日本人ファースト」は日本国民の利益を優先する政策を意味し、外国人への差別を直接意図しないとしています。しかし、演説や政策の一部に「(すべての)外国人が優遇されている」といった誇張が見られ、これが排外主義的な印象を与えています。
「与えています」と書きましたが、これは「そうも受け取られてしまう」という消極的な意味合いばかりではなく、意図的に外国人やマイノリティに対する敵対心を助長している可能性があります。なぜなら、このスローガンを掲げる政党は「選挙戦略としてのキャッチコピー」としているからです。本当に素晴らしいスローガンならば、選挙中だけのキャッチコピーにするはずがありません。これを唱える者は、現在のような経済的閉塞感や国際的孤立感が高まる時期に「自国第一主義」は支持を集めやすい傾向があることを熟知しており、意図的に「失言」「拡大解釈」することで、民衆にある種の感情を喚起しているのです。(「一部の外国人による不法な土地・不動産購入」→「行き過ぎた外国人受け入れ反対」→「外国人排除」)
【私たちにできること】このスローガンを評価する際は、以下を考慮すべきです。
「事実ベースの冷静な議論」
感情的な非難ではなく、党の政策や主張の具体的な問題点をデータや論理に基づいて指摘する。その際に、公式情報を確認し、客観的なデータに基づいて判断することが重要です。
「多様な視点」:支持者の声(「日本人のアイデンティティを守りたい」)と批判者の声(「差別を助長する」)の両方を聞き、背景にある社会的不安や価値観の違いを理解することが必要です。(本投稿もそういうつもりで書かれました。)
「対話の重視」:スローガン支持者の懸念(例:食の安全、外国人政策)に耳を傾け、共感を示しつつ代替案を提案します。彼らの多くが持つ「既存政治への不信」を理解しようとする姿勢が効果的です。このサイトでも「自分と意見の合わない相手と対話する重要性」について、何度も語ってきました。
【やってはいけないこと】SNSにおけるネガティブ・キャンペーン
「この党に投票したら、一生後悔すると思いますよ。」「この党に投票するは教養が低い。」といった具体的な文脈を欠いた批判の投稿をすることは、1つの事実を拡大解釈してスローガンを連呼することと実は同じなのです。
逆にこのような書き込みが、スローガンを唱える党の支持を増やした可能性もあります。これは「バックファイア効果」や「ストライサンド効果」に似た現象として説明されることがあります。
そのような書き込みは、スローガンの支持者や潜在的な支持者に「被害者意識」や「結束感」を生み出すことがあります。特に、新興政党においては「既存の体制やマスコミに抑圧されている」という物語が強調され、批判がこの物語を強化する形で機能する場合があります。
また、批判的な投稿が拡散されることで、その党の存在を知らなかった人々が関心を持ち、結果として支持者が増えます。さらに、過激な批判(例:「〇〇党支持者は頭が悪い」)は、支持者や中立層に「自分たちが誤解されている」と感じさせ、逆にその党への共感や忠誠心を高める可能性があります。
・・・とここまで、けっこう常識的な(真っ当な)ことを書いてきました。(また「つまらない」と言われそうです。。。)
しかし、もう少し人間の深層心理に切り込んだ分析をしてみたいと思います。(当然、賛否が分かれる部分だと思います。)
たしかに「人間にはファーストもセカンドもない」ことは真実です。しかし、それならばなぜ「日本人ファースト」に限らず、「都民ファースト」や「自国中心主義」が支持を集めるのでしょうか。
それは、人間の本質の中に、「自分だけが得をする」ことに快感を覚えることが含まれているからです。たいていの振り込み詐欺が「あなただけが得をする」という台詞に引っ掛かっていることを想起してください。
人間は進化の過程で、生存確率を高めるため、脳が報酬系(ドーパミン放出)を活性化するように進化したと考えられます。自分だけが得をすることは、他者に対する優越感や自己肯定感を高め、心理的な満足感につながり、社会的にも「成功」の象徴とされます。
最終回の次回では、これに加えて、「(その1)の最後で予告しておいた問題提起」に答えます。たぶん(その3)が一番面白いと思いますので、お楽しみに!