『教皇選挙』にせよ、この『国宝』にせよ、私は映画がヒットすると観に行きたくなくなるタチなのですが、今年から加入しているU-NEXTでポイントが自動的にたまるおかげで、「なかば強制的に」映画館に足を運ぶようになりました。しかし、これが意外に楽しいのです。

さて、本日は『国宝』を鑑賞してきました。平日の午後ではありますが満員です。
未見の方もおられると思いますので「あらすじ」は伏せますが、それでもある程度内容が分かってしまう記述がありますので、その点ご注意ください。では、この映画の見どころをまとめてみたいと思います。

まずは「歌舞伎の“様式美”が極まる映像美」です。

特に撮影ソフィアン・エル・ファニ(代表作:『アデル、ブルーは熱い色』)と美術監督種田陽平(代表作:『キル・ビルVol.1』)が、歌舞伎の美と映画のアート性を高度に融合させています。様式美が渾身の映像として昇華されており、特に『二人道成寺』や『曽根崎心中』の舞台シーンは、息をのむ迫力です(映画でしかありえないアングルもたくさんあります。またクローズアップが多用されています。)。女形の化粧が崩れるシーンは、ジョーカーを彷彿とさせる象徴性があり、伝統芸能の華やかさと過酷さを視覚的に表現しています。また昭和30年代の街の風景や宴会の様子なども、個人的には懐かしく大いに楽しめました。

次に「血筋と才能をめぐる運命を紡ぐ葛藤」です。

物語の中心にあるのは血筋に拒まれた喜久雄と、生まれながらに期待される俊介という対照です。喜久雄のヤクザから歌舞伎への転身を通じて、伝統 vs. 革新、血縁 vs. 才能、成功の代償を描きます。その描写は、戦後日本の変遷を背景に、芸能界の厳しさや差別をリアルに反映しています。

「主演2人の圧巻の女形演技」も見どころです。

喜久雄は、美しさゆえの孤独と野心を体現し、転落から再生までの演技が刺さります。俊介とのライバル関係は、友情と嫉妬の複雑さが感動的です。喜久雄の“芸のためならすべてを犠牲にする姿勢には、狂気すら感じられますが、それでも人としての弱さが滲む姿は、心に長く残ります。ラストの舞いは、人生の栄光と幻影を象徴しています。

最後に「演者たちの深層演技と芸道への執念」です。

渡辺謙の半二郎や田中泯の万菊は、歌舞伎の重鎮として気品を放ち、幼少期の俳優たちの演技も秀逸。寺島しのぶや高畑充希の女性陣が、男たちの世界に情感を加えています。

本作品は3時間弱と長いですが、映像が美しい上に、ドラマチックな構成であり、観客を飽きさせません。おそらく上映期間はあとわずかと思われます。機会がありましたら是非ご覧いただきたい作品です。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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