『英語のハノン〈中級〉』という本に目を通していましたら、
We need to change the rule as we discussed on the phone.
という例文が出てきました。

この文のように、接続詞asが「様態」を表す特に、他動詞discussの目的語が省略されます。
では、ほかにdiscussの目的語が省略される場合はあるのでしょうか。

他動詞 discuss は通常「〜について話し合う」という意味で、必ず明示的な目的語(名詞句や節)を取る動詞です。したがって、原則として目的語を省略することはできません。しかし、例外的に省略が自然に見えるのは、次のように文脈や修飾語句が目的内容を明確に示す場合です。

as we discussed on the phone / earlier / yesterday
 この場合、as 以下が「様態」を表しており、「どのように話し合ったか」を示しています。目的語(何を話し合った
か)は文脈上自明なので省略されます。
when we discussed last time / before
 同様に「前回話し合ったとき」のように時間状況が共有されている場合も省略されます。

imperatives or elliptical replies(命令文・省略文)でも省略されることがあります。 たとえば、
 “We’ll discuss later.”(=We’ll discuss it later.)
 のような口語的短縮では目的語 it が省かれることがあります。ただし、書き言葉や形式的な英語では避けられます。

まとめますと、discuss の目的語省略は原則不可ですが、「話題が共有されている文脈」や「as/when + 節」などの従属節中では意味が補われるために自然に見える、というのが正確な説明です。

これはdiscussに限らず、基本的には他動詞一般に当てはまる原則です。

つまり、他動詞は原則として目的語を必要とするが、文脈によって目的語が推測できる場合には省略されることがある、というものです。具体的に言うと、

文脈的省略(ellipsis):目的語が明らかなとき、繰り返しを避けて省略する。
 A: Did you finish the report?
 B: Yes, I finished (it).
慣用的省略(idiomatic or pragmatic omission):動作対象が一般的・自明な場合に限られる。
 - Let’s eat.(=Let’s eat something.)
 - I’ve already cooked.(=I’ve already cooked dinner.)

ただし、discuss のように「抽象的内容(議題)」を取る動詞では、目的語の省略は比較的まれで、状況依存的です。一方、eat, drink, read, write のように「通常の目的が推測しやすい」動詞では省略が広く許されます。要するに、他動詞でも省略が許されるかどうかは、「動作対象が文脈的に明確か」「慣習的に推測されやすいか」で決まるということです。

She is hard to please.のようないわゆる「タフ移動」の構文でも他動詞の目的語が省略されるように見えます。ただし、She is hard to please の場合は、文法的には「目的語の省略」ではなく、目的語の移動(タフ移動 tough movement)と呼ばれる構文現象です。

具体的には、基底構造は It is hard to please her. です。ここで her が主節の主語位置に移動して She is hard to please. となります。したがって please の目的語が「省略」されたわけではなく、文中に統語的な痕跡(trace, PROなど)を残して主語位置へ移動したと分析されます。

今回の内容を整理してみましょう。

We need to change the rule as we discussed on the phone. → 目的語の省略(ellipsis)

She is hard to please. → 目的語の移動(tough movement)

という違いです。前者は談話的・語用論的な省略、後者は統語構造上の操作であり、形式文法上は別のメカニズムです。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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