皆さんはジャズ・ドラマーと言えば誰を思い浮かべるでしょうか?
とりわけ有名なのが、バディ・リッチ(Buddy Rich)、アート・ブレイキー(Art Blakey)、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)、マックス・ローチ(Max Roach)、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)の5人であるとされています。(しかしこの他にも私が敬愛するドラマーはたくさんいます。)
上記5人のうち、私はバディ・リッチはあまり聴いたことがありません(すみません)。
アート・ブレイキーは『モーニン』におけるNiagara Rollと呼ばれる特徴的なドラミング奏法が有名です。しかし、それほど好きではないかなあ・・・。
エルヴィン・ジョーンズはジョン・コルトレーンのレコードで相当聞きこんでいます。うねるドラミング、60年代にポリリズムは斬新でした。ちなみに奥さんは日本人です。
マックス・ローチは「ドラムでメロディを叩くことのできた最初のドラマー」と称されますが、WE INSIST!という、60年代公民権運動に関する作品を録音したことでも有名です。
トニー・ウィリアムズですが、何を隠そう、彼こそが私の一番好きなジャズ・ドラマーなのです。ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ウイントン・マルサリスのバンドで彼の生演奏を聴きましたが、まさに「震撼する」演奏でした(うまく言えない・・・)。しかし、残念なことに早死してしまいました。
さて、本日の話題の主人公は、そのトニー・ウィリアムスと並び称される、ジャック・ディジョネット
(Jack DeJohnette)です。ディジョネットは、1968年にトニー・ウィリアムスの後任としてマイルス・デイヴィスのグループに選ばれ、数々の歴史的名盤に参加しました。1970年代前半にはマイルスのバンドを脱退し、チック・コリア、キース・ジャレットその他数多くの有名なミュージシャンと共演しました。
私が一番印象に残っているのは、彼の自己名義のバンドJack DeJohnette’s Special Editionです。これは、彼の作曲家・リーダーとしての側面を最も明確に示したプロジェクトです。単なる「ドラム主体のバンド」ではなく、ジャズの進化そのものを体現する実験場のような存在でした。
このグループはメンバーを入れ替えながら何作か作品を発表しましたが、どの編成にも共通しているのは、デジョネットがリズムを超えて「音楽の文脈全体を指揮している」点です。つまり彼は単なるドラムではなく、「アンサンブルの思想家」でもあったのです。
彼のドラミングですが、技術的には、ビバップからフリージャズ、ロック、電子音楽まで自在に行き来できる稀有な存在でした。リズムは重層性に富み、同時に“流動的”です。拍を刻むのではなく、音の流れ全体を彫刻するように演奏するのです。そのため、単なる伴奏者ではなく「共演者として音楽の方向を動かす」役割を担っていました。
彼の本質を一言で表すなら、伝統に根ざしながらも、どんな文脈でも“今この瞬間”の音楽を創造するタイプの「構造と自由のあいだを絶えず往復するドラマー」と言えるでしょう。