今回は、『使うための英語』(瀧野みゆき、中公新書)(リンク)の【第2章】【第3章】【第4章】ををご紹介します。

ふだんの哲学系の新書は、「わからない部分を逐一解明していくスタイル」ですが、英語系の新書に関しましては、現在英語を教えており英語教育を大学院で学んだ私の目から見て気になった部分だけを取り上げてコメントしていきます。細かい部分に関しましては、直接本書を購入し、手に取っていただければと思います。「  」は原則引用部分です。

(ただし引用でなくても、「ELF」のように、ある用語に「  」を使用することがあります。)

なお*の後は、著者とは異なる私の個人的な「意見」「感想」や「研究」です。

【第2章 音に浸る-英語の学び方1】

著者は、「音読」に「シャドーイング」の要素を加えた「聴き音読」を提唱し、その題材として「演説」や「名言」を推奨します。

*特に異論はないのですが、「演説」とか「名言」はなんだか偉そうな感じがして、個人的にはあまり好きではありません。キング牧師もケネディもオバマも裏ではいろいろあるし、ザッカーバーグもあまり彼を尊敬できないので、どうもやる気が起きないのです(個人の感想です。)

この章で面白い観点だなあと思ったのは、「英語の発音はネイティブを目指す人もいれば、そうでない人もおり、発音には、実用とアイデンティティの双方が反映される。」という考え方です。

* 言われてみればこれまた当然なのですが、普通の参考書には「発音」と「アイデンティティ」についてはっきり書いてあるものは少ないような気がします。

* ELFでは、発音は「所属集団の象徴」よりも「相互理解に必要な可 intelligibility」の側面が重視されます。したがって、母語訛りは必ずしも否定されず、むしろ話者のアイデンティティとして許容される一方、誤解を生む特徴だけを調整すればよいという立場です。つまり、アイデンティティの保持とコミュニケーション効率を分けて考えるのが基本的な視点です。

次に、発音練習の3つのステップが紹介されます。(詳細は省略します。)

STEP1 全体的な印象を英語らしくする

STEP2 強弱やリズムで全体を英語らしくする

STEP3 大事な音を英語らしくする

リスニングの材料としては、「多聴は、虫食い状態の情報を通して、内容を把握する力を育てる訓練」であるとして、YouTubeなどの動画を積極的に勧めています。私はTEDはたまに活用していますが、お恥ずかしいことにTED-Edは知りませんでした。細かい活用方法はここでは省略します。

【第3章 自分のニーズから学ぶ-英語の学び方2】

第3章ではスピーキングが扱われます。学校英語では「学ぶべき文法事項等」が先にあり、「それを使って何を言うか」に焦点が当てられますが、ELF的発想では、まず「自分の伝えたいことがある」ということが重要です。

この後、著者の提唱する「ブロック法」を用いてミニ・プレゼンを組み立てる方法が数ページにわたって詳述されており、なかなかためになります。

* しかし、私が思うに、普通の大人には、プレゼンする「場」がそもそもないのではないでしょうか??学校教育を離れ、仕事でも英語を使用しない人は、(英会話学校にでもいかない限り)どうやってプレゼンの場を確保するのでしょうか?

*、、、と思って、少し調べましたら、今はオンラインでも以下のように、プレゼンの場はたくさんあるようです。

①英語スピーチの相互練習コミュニティ

無料・有料を問わず、話者同士が発表し合いフィードバックを交換する場があります。小規模なミーティング形式で、資料を共有しながら本番同様に話せるのが利点です。

②英語ディスカッション/ミートアップ型の場

自己紹介だけの雑談ではなく、短い発表を求められる回も多く、プレゼンの予行演習に向いています。

⓷オンライン英会話の“プレゼン特化レッスン”

マンツーマンで練習し、構成・論理展開・スライド運用まで細かい指摘を受けられます。時間を区切って本番形式にしやすい点がメリットです。

④MOOC型の英語スピーキング・アカデミック英語講座

課題としてミニプレゼンを録画提出し、同じ受講者からピアレビューが返ってくる形式もあります。

本章の後半は「語彙を必要順に集中してみがく」です。ここでは、習得した単語の語数ではなく、「自分にとって必要な語を使えるようになること」が目標です。自分にとって必要な語は、以下の3つに分類できます。

①専門用語

②基礎的語彙

③テーマ語彙

①は、たとえば仕事上の業界用語にあたるものですが、さほど語数は多くありません。

②は、高校1年くらいまでの基本的単語と考えればよいです。

著者は、単語集などを使用した「集中法」と、読んだり聴いたりした中で出会った語を覚える「出会い法」を組み合わせを提唱しますが、これはまあ当たり前で、皆様もすでに実行されているのではないでしょうか。

これまたよく言われることですが、著者は語彙習得において英英辞典を積極的に活用することを勧めています。

本書で挙げられているのは以下のような辞書です。

・OALD

・Merriam-Webster Thesaurus

・Collocation Dictionary

【第4章 「相手に伝わる」を考える-英語の学び方3】

この章では、ビジネスの現場を想定して、会議とメールに焦点が当てられます。

ミーティングの課題としては、以下の6点が指摘されています。

①リスニングについていけない

②英語で意見を要領よく言えない

③反論の仕方がわからない

④説得ができない

⑤発言のタイミングをつかめない

⑥相手の人となりが読み取れない

メールに関しては、「英語がわかりやすく」「失礼がなく」「用件がすぐ理解できる」ということが重要であるとし、具体的に「4行ルール」というものを提唱しています。全体では4行以上になってしまうのですが、構成は次のようなものです。

・Subject 用件がすぐわかるキーワードを含める

・短い挨拶

・1行目 用件を明確に書く

・2行目 理由や背景を説明する

・3行目 相手のアクションに必要な情報を提供する

・4行目 自分の気持ちを添える

・短いおわり

この章の最後に、生成AIを使ってメールを書く方法が紹介されています。それに関連して、著者はAIとの英語での対話を強く勧めています。

* なるほど!私の『AIとの対話篇』も英語バージョン作ってみましょうか。

生成AIを使ってメールを書く際の指示の例を本書から引用します。

Please review my email draft and suggest improvements. Make sure that it is natural, clear, and grammatically correct for business communication. This email is for a colleague within my compny.

変更点を箇条書きにしてもらう場合は、以下のように書きます。

Please list your changes using bullet points.

* 生成AIで英文メールを書く際は、まず 内容の正確性と事実関係の確認 を自分で行うことが最重要です。AIが生成した丁寧表現や論理展開は有用ですが、文脈・トーン・相手との関係性 は人間側が調整する必要があります。最後に、誤訳・過度な婉曲・不自然な礼儀表現が混ざっていないかを 自分の目的に合わせて編集することがポイントです。

投稿者 shobota

都立高校で40年以上英語を教えている教員です。哲学や倫理に関心があります。

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