2025年慶應経済学部の入試問題に、
Consider the major ancient civilizations, be it Mesopotamia,…etc.
という文が出てきました。著作権の関係で全文は載せられませんが、ここでのbe itは「~のいずれであろうと」という意味です。文法的にはどう説明されるのでしょうか。
「be it ~」という表現は、「~であろうとも」「~が何であれ」という〈譲歩〉を表します。
文法的な説明としては、「仮定法現在」と「倒置」という2つの要素が組み合わさっています。
以下に論理的なプロセスを分解して解説します。
- この表現は、もともと接続詞の whether を使った以下の文がベースになっています。
Whether it be [A or B] …
ここから、接続詞の Whether が省略され、その合図として主語(it)と動詞(be)の順序が入れ替わる倒置(Inversion)が起きています。
(Whether) it be …→Be it …
- ここで動詞が is ではなく原形の be になっているのは、「仮定法現在(Subjunctive Present)」だからです。
直説法(is)は事実として断定する場合(It implies that it is a fact.)に使用します。
仮定法(be)は「もし~だとしても」という仮定や、「~であるべきだ」という話者の心持ちを表す場合に用います。
ここでは「AであろうがBであろうが(事実はどちらでも関係なく)」という譲歩のニュアンスを含むため、事実を確定しない原形の be が使われます。
この形は非常に文語的な表現ですので、論文や演説、格式高い文章などでよく見られます。現代の口語では、単純に “Whether it is A or B…” や “No matter if it is A or B…” と言うのが一般的です。
いくつかのパターン(名詞、形容詞、リスト)に分けて例文を挙げます。
- 名詞を並べるパターン (A or B)
「AであろうとBであろうと」という対比で最もよく使われる形です。
The law applies to everyone, be it a king or a beggar.
(その法律は、王であろうと乞食であろうと、すべての人に適用される。)
解説:身分の上下に関わらず、という意味の古典的な対比です。
I will accept any outcome, be it success or failure.
(成功であろうと失敗であろうと、私はどんな結果も受け入れるつもりだ。)
解説:結果がどちらに転ぼうとも、という譲歩を表します。
- 形容詞を並べるパターン
状態について「どんな状態であっても」と言う場合です。
Any contribution, be it small or large, is greatly appreciated.
(多かろうと少なかろうと、どのような寄付も大変感謝いたします。)
解説:チャリティーや募金の呼びかけなどでよく見られる表現です。
The task must be completed, be it easy or difficult.
(容易であろうと困難であろうと、その任務は遂行されなければならない。)
- 3つ以上列挙するパターン
選択肢が複数の場合も使えます。
Any form of discrimination, be it based on race, gender, or religion, is strictly prohibited.
(人種、性別、宗教、いずれに基づくものであろうと、いかなる形の差別も厳重に禁止されている。)
解説:契約書や就業規則(コンプライアンス関連)で非常によく使われる構文です。
- 慣用句的な名作フレーズ
この文法を使った、非常に有名な英語の古いことわざ(歌詞)があります。
Be it ever so humble, there’s no place like home.
(どんなに粗末であろうとも、我が家に勝る所はない。)
解説:『埴生の宿(Home! Sweet Home!)』という曲の一節です。ここでの ever so は「どんなに〜でも(however)」という強調の意味で使われています。
例文を見ていただくと分かるように、「be it ~」の塊(副詞節)は、文の途中や文末に挿入されることが多いです。
主語 + [ , be it A or B, ] + 動詞 … 文全体 + [ , be it A or B. ]
このようにカンマで区切って挿入することで、補足的に「それが何であろうともね」と説明を加える役割を果たします。