インスタグラムで、カフェかどこかにいた人たちが即興で演奏している曲がものすごく懐かしくて、何だろうと思ったら、ショスタコーヴィチの「セカンド・ワルツ」だった。
この曲は、ショスタコーヴィチが1938年に作曲した「ジャズ組曲第2番」(Suite for Jazz Orchestra No. 2)の第2曲として知られている。1930年代のスターリン政権下のソビエトでは、芸術家に対しプロレタリアートのための「大衆的で親しみやすい」音楽の創作が奨励されていた。ショスタコーヴィチは、クラシック音楽の厳格な形式と、ジャズやポピュラー音楽の要素を融合させることで、この要求に応えようとした。
この時期、彼はオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』(1934年)への批判や政治的圧力を受け、芸術的表現において慎重にならざるを得ない状況であった。そのため、「ジャズ組曲」のような作品は、比較的「安全」で大衆受けする音楽として機能し、彼の創造性を発散させる場でもあったのだ。
ただし、「ジャズ組曲第2番」は長らく楽譜が紛失し、完全な形で演奏されることが少なかったため、「セカンド・ワルツ」単体が独立して知られるようになった。特にこのワルツは、優雅でロマンティックな旋律と、ショスタコーヴィチらしい皮肉や軽やかな色彩が混在する魅力的な作品として人気を博した。
ショスタコーヴィチの作品は、交響曲や弦楽四重奏曲のような深刻で内省的な作品と、映画音楽やバレエ音楽、ジャズ組曲のような軽快な作品の両極にわたる。「セカンド・ワルツ」は、ショスタコーヴィチの音楽的語彙の中では比較的単純で親しみやすい構造を持ち、華やかなオーケストレーションと流れるようなメロディが特徴である。しかし、ショスタコーヴィチ特有の「二面性」――表面上の軽快さと、その裏に潜む皮肉や哀愁――が感じられ、彼の他の作品(特にバレエ音楽『ボルト』や『黄金時代』)と通じる要素がある。
この曲が特に広く知られるようになったのは、スタンリー・キューブリックの遺作である『アイズ・ワイド・シャット』での使用によるものだ。映画のオープニングや舞踏会シーンで「セカンド・ワルツ」が流れ、優雅かつ神秘的な雰囲気を醸し出している。
実はこの曲は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「山猫」の舞踏会のシーンにおいても印象的に使用されている。このシーンでは、主人公ドン・ファブリツィオ・サリナ公爵が、若いカップルであるタンクレーディとアンジェリカの華やかなダンスを見守る場面が描かれるのだが、ワルツの優雅で哀愁を帯びた旋律は、貴族社会の衰退と時代の変化を象徴するこのシーンの雰囲気を強調している。
ショスタコーヴィチ、私は“バビ・ヤール”という曲で知っていました。
エフトシェンコという詩人が、第二次世界大戦期のナチス・ドイツによるウクライナでのユダヤ人虐殺を詠った詩にショスタコーヴィチが曲をつけたものです。
かなりおどろおどろしく、迫力と重さのある曲だと印象に残っていたので、こんなにも優雅でしっとりとした曲を書いていたなんて驚きました。
先生も書かれていたように、二面も三面もある音楽家ですね。
第二次世界大戦期の文化や芸術について何かご存知だったり、おすすめのものがあればぜひ紹介してほしいです。
コメントありがとうございます。「バビ・ヤール」私も生で聴いたことがあり感動いたしました。